テレワーク/リモートワークの広がりにより、テクノロジーが会議の形態を変えつつあります。では、議事録はどうでしょうか? 今回は、AI技術を活用した議事録作成サービスを紹介します。
目次
議事録作成で押さえておきたいポイント
議事録は、会議のアウトプット。その役割は、会議の内容を参加者・関係者と共有することにあります。作成時に押さえておきたいポイントは大きく3つ挙げられます。
- 会議で何が決まったか、何が決まらなかったのかを明確にする
- 誰がどんな発言をしたか、議論の中身や決定に至る経緯を記録する
- 会議で決まったこと(決まらなかったこと)に対して、いつまでに誰が何をするか明確にする
議事録を作成することで、認識の統一を図り、次のアクションを明確にすることができます。また、後々トラブルになりそうな「言った言わない問題」を未然に防ぐこともできます。
プロジェクトによっては議事録がクライアントへの納品物になることもありますし、会社の取締役会など議事録の作成と保存が法律で義務づけられている会議もあります。また、自治体の会議などは情報公開の観点から議事録作成は欠かせないものとなっています。これらの現場では、音声議事録サービスの導入も進んでいるようです。
音声議事録サービスを使うメリット
音声議事録サービスを利用するメリットは、以下のようなことが挙げられます。
- 自動化できる部分を自動化し、本来やるべき作業にリソースを割くことができる。
- クラウドベースでリアルタイムに共有できるため議事録へのフィードバックがその場で得られる。
音声議事録サービスを上手に使うポイント
音声議事録サービスに使用されている音声認識エンジンは、日進月歩で音声の認識率は向上しているものの、100%正確に入力できるものではありません。また、話し方や機材の環境によって正確さも変わってきます。
以下のようなことに気をつけると認識されやすくなり、手直しの手間を省くことができます。
- 極端な早口や遅すぎる話し方にならない
- 考えながら途切れ途切れに言葉を発しない(単語ではなく文章を意識する)
- 「えー」「あー」など、つなぎ言葉は、なるべく使わない
- 姿勢と発声(腹式呼吸)に気をつける(パソコンに向かいながらだと猫背になりがち。滑舌のいい発話を意識する)
- 環境音に気をつける(後で聞き返したときに気になるので、マイクを使って雑音が入りづらい環境に)
- 言葉選びも気をつける(方言や専門用語、略語、固有名詞などは認識しづらい)
音声議事録サービス、3選
代表的な音声議事録サービスを3つピックアップしてみました。
Smart書記

- 費用:月額10万円(200時間/月まで。以降、追加料金あり)初期費用、保守費用なし※税抜き
- 利用人数:制限無し
- 利用方法:参加者がサービスURLにアクセスして参加する(スマホアプリあり)
- 入力方法:マイクからの音声入力、音声ファイルからの音声入力
- 特徴:発言単位で聞き直してリアルタイムで編集できる。約90言語のマルチリンガル(多言語翻訳)対応。
徳島県庁とメディアドゥによる実証実験から生まれ、約800の企業や地方自治体で利用されているサービス(メディアドゥからカーブアウトしたエピックベースが運営)。発言者と発言時刻、発言内容をリアルタイムに記録しながら、その場で文字起こしのデータを編集もできる点が特徴。データの出力形式はWord形式、Excel形式、Text形式、3つの形式に対応しているほか、タイムスタンプや発言者を付ける、マークした行(発言)だけを抜粋するなど、出力オプションも豊富で議事録作成がラクになりそうです。
議事録作成支援サービス「COTOHA Meeting Assist」

- 費用:月額5万円〜(50時間/月まで)初期費用なし※税抜き
- 利用人数:最大1,000ID
- 利用方法:参加者がサービスURLにアクセスして参加する
- 入力方法:マイクからの音声入力、チャットからのテキスト入力、音声ファイルからの音声入力
- 特徴:テキストチャットでも参加可能。発言内容をAIが自動認識して「タスク」などのラベル付けをしてくれる。10言語の自動翻訳機能。
NTT Communicationsが提供する議事録作成支援サービス。Smart書記と同様、参加者の発言を時系列に自動でテキスト化してくれます。発言ごとに後から聞き直せるので、認識が甘い、漢字の変換が違う点などを修正することも可能。また、大きな声が出せない場所にいる参加者はテキストチャットで会議に参加できる点や、AIが自動で「重要」「タスク」といったラベルを付けてくれる点もユニークです。議事録に求められる「いつまでに誰が何をするか」をまとめやすいツールだと思います。
GIJI

- 費用:0円のFreeプランあり
- 利用人数:なし(Freeプランは10名まで)
- 利用方法:参加者がサービスURLにアクセスして参加する(スマホアプリ対応予定)
- 入力方法:専用マイクからの音声入力
- 特徴:専用マイクと議事録に特化した専用エディタ。4か国語対応。オンプレミス対応。
アジャイルウェアが提供する「GIJI」は、議事録作成に特化した音声議事録サービス。前述の2つのサービスと大きく違うのは、専用のマイクと議事録に特化した専用エディタがあること。リアルタイムで文字起こしされる発言をドラッグ&ドロップで議事録に差し込みながら、専用エディタで議事録を作成していくイメージです。すべての発言を出力してから成形するのではなく、会議に参加しながらその場で議事録を仕上げていくことができます。作成中の議事録はリアルタイムで共有できるので、その場で確認・承認してもらえば、会議終了時に議事録を完成させることも可能です。
また、クラウドサービスでの利用だけでなく、自社サーバー、プライベートクラウドでのオンプレミスにも対応しているので自社のセキュリティ基準で運用できます。
コストをかけずに議事録作成を効率化できる?
音声議事録サービスではありませんが、身近なアプリを使って、ちょっとした工夫をすることで議事録作成を効率的に行うことができます。
OneNote
Microsoftが提供しているデジタルノート「OneNote(ワンノート)」には、デバイスのマイクを使ったオーディオメモ機能があります。自動でテキスト化することはできませんが、音声収録しながらテキスト入力でメモを残すことができます。
特徴的なのは、テキスト入力と音声収録が連動している点。入力したテキストを選択すると、テキスト入力していた時点の音声を聞き直すことができるので「会議中のポイントとなる発言だけを押さえておきたい」という使い方をしたいときに便利です。
Googleドキュメント
GSuiteの「Googleドキュメント」には、自動で音声をテキスト化してくれる「音声入力」機能があります。ただし、バックグラウンドで実行できないため、工夫が必要です。例えば、Googleドキュメントのスマホアプリで会議の音声を入力しながら、パソコンでGoogleドキュメントにアクセスしてリアルタム編集する、といった使い方ができます。
また、サウンドミキサーや仮想オーディオ入出力ツール(SoundFlowerなど)を使って、パソコン上で再生される音声をマイク入力に変換すれば、離席前に会議音声を再生&音声入力をセットして、戻ってくるころには自動文字起こしが終わっている、という使い方もできます。
クラウドサービスの音声認識APIを使うことも
AWS(Amazon Web Service)の「Amazon Transcribe」、GCP(Google Cloud Platform)の「Speech-to-Text」、Microsoft Azureの「Speech to Text」、IBM Cloud(IBM Watson)の「Speech to Text」など、メジャーなクラウドサービスが提供している音声認識APIを使用して文字起こしを自動化することもできます。
多少のプログラミングの知識は必要ですが、従量課金で使えるため費用的・時間的コストをグッと抑えることができます。
まとめ
議事録を作成する際、録音した音声を聞きながら文字起こしをしていく従来のやり方も結構ですが、どうしても手間と時間がかかってしまうもの。議事録作成時間を短縮したいと感じている人は、やり方を工夫して本来やるべき作業にリソースを割けるよう効率化を図ってみてください。