Web業界における「フリーランス」という働き方を考える

働き方改革により、副業やパラレルキャリアを認める企業も増えてきました。テレワーク/リモートワークが普通の働き方になりつつある今企業に所属して働くのではなく、フリーランスとして働く、という選択肢を考えている人もいると思います。今回は、フリーランスという働き方について考えてみたいと思います。

フリーランスとは、雇用契約のない働き方

フリーランスという言葉の語源は「中世ヨーロッパの傭兵」にあります。傭兵は金銭などの報酬条件が合えば、どの君主の戦争にも参加する兵士のことです。歩兵や弓兵、騎兵などさまざまな兵士がいて、個人行動ではなく傭兵団を結成してグループで行動していました。そして、傭兵団を率いていたのが槍騎兵(Lancer)だったそうです。そこから特定の君主と契約していない傭兵をフリーランスと呼ぶようになり、現在は特定の組織に属さず仕事をする人をフリーランスと呼んでいます。

ちなみに、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会では、フリーランスを「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」と定義し、大きく分けて独立系フリーランス副業系フリーランスがいる、としています。

画像出典元:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2018」

フリーランスと個人事業者の違い

上記の図のように、フリーランスにはいろいろなタイプがあります。コロナ禍の持続化給付金でも「フリーランスを含む個人事業者」という表現がありましたが、個人事業者・個人事業主はフリーランスに含まれますが、フリーランス=個人事業者ではありません

フリーランスの中でも、税務署に開業届(正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」)を提出した人が、個人事業者・個人事業主と呼ばれます。

開業届を提出しなくてもフリーランスとして働くことはできますが、開業届を提出すると屋号で銀行口座を開設できたり、確定申告の際に青色申告の特典を受けられたり、その他の税法上の制度を利用できたり、メリットはあります。(青色申告の特典を受けるには、別途「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です)

参考:国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」

参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」

なお、特定の企業と雇用契約を結びながら、副業系フリーランスとして仕事をする人でも開業届を提出することは可能です。

フリーランスで働くメリット

しばしば「自由業」と呼ばれるフリーランス。その働き方には、どんなメリットが考えられるでしょうか。

自由な働き方ができる

フリーランスは案件ごとに条件は異なりますが、基本的には決められた仕様を満たす成果物(アウトプット)を、決められた期限までに提出できればOKというケースが多いです。そのため、時間的な拘束や場所的な拘束から解放された働き方が可能です。朝早く起きて満員電車に乗って出社する必要もなければ、自宅やカフェ、コワーキングスペースなど仕事をする場所も自由です。親の介護をしながら在宅で働く、子育てをしながら在宅で働く、そんなフリーランスも多くいます。

収入アップが期待できる

しっかりしたスキルがある人なら、収入アップも期待できます。会社員の給与は毎月変わりませんが、フリーランスは働いたら働いただけ稼ぐことができます。また、クライアントにスキルが認められれば、交渉次第で仕事の単価アップも期待できます。

仕事を選ぶことができる

フリーランスは、案件ごとに業務委託契約をするのが一般的です。そのため、単価の高い仕事、興味のある仕事を選んで受注することができます。「上司に言われたから仕方なくやる」という内容の仕事を断るのも自由です。

人脈が広がる

特定の企業に所属しているわけではないので、その気があって相手が求めるスキルがあれば、いろいろな企業や個人と仕事をすることができます

定年退職がない

必要とされるスキルがあれば、年齢に関係なく働き続けることができます

フリーランスで働くデメリット

フリーランスはいろいろな働き方が可能ですが、ここでは独立系フリーランスとして働く際のデメリットというか、不安事項を挙げてみたいと思います。

仕事環境を自分で整備する必要がある

会社員のようにオフィスに行けば、パソコンもプリンターもある、という訳にはいきません。仕事をするための場所はもちろん、仕事で使うパソコンやアプリケーションなども自ら選定して準備する必要があります。もちろん、そのコストも自分で払う必要があります。

健康リスクと隣り合わせ

会社員が病気や事故で入院した場合は、他のスタッフが業務を肩代わりすることで、会社としては業務を受注し続けることができます。フリーランスの場合は、そうはいきません。病気が完治するまでプロジェクトは待ってくれません。業務を辞退する、他の人を紹介するなど、仕事を手放さなければいけない状況も考えられます。

仕事や収入が不安定になることも

働いたら働いただけ稼ぐことができるフリーランス。言い方を変えると、仕事が得られなければ収入ゼロという可能性もあります。突出したスキルがなければ、仕事を獲得するために他のフリーランスよりも単価を下げざるを得ない、という状況もあるかもしれません。

また、現在のコロナ禍のような状況下で、プロジェクト自体がストップしてしまえば、収入もストップしてしまいます。あるいは企業のコスト削減策として外部発注を控える、受けられる仕事自体がなくなる、ということも考えられます。

社会保障が手厚くない

会社員には会社が半分費用負担してくれる厚生年金に加入できますが、フリーランスは国民年金に加入するのが一般的。納める保険料も違うので、将来受け取れる年金額に差が出てきます。

また、会社員は会社の健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)の社会保険(健康保険)に加入しますが、フリーランスは自治体が運営する国民健康保険(国保)に加入することになります。社会保険は従業員への福利厚生という側面もあるため、保険料や保険給付の内容、医療サービスを受けたときの自己負担額などは、国保より手厚いです。

仕事以外の事務作業がある

経費処理や請求書のやりとり、確定申告などの事務仕事も自分で行う必要があります。税理士などに依頼して負荷を減らすことも可能です。

将来への不安

数年前「AIに取って代わられる仕事」が話題になりました。フリーランスに限らず会社員にも言えることですが、技術の進歩によって現在のスキルが通用しなくなる時代が来る可能性も考えられます。スキルが通用しない=仕事にならないため、フリーランスにとっては死活問題です。そうならないためにも新しい技術をキャッチアップして常に勉強していく必要があります。

フリーランスになるには

フリーランスになるには、特別な手続きは不要です(個人事業者として活動するには開業届を税務署に提出する必要はあります)。
あらゆる業界・職種でフリーランスという働き方は可能です。しかし、仕事の内容や職種が果たす役割によって、フリーランスとして受注しやすい仕事と、受注しづらい仕事があるのも実情です。

Web業界に限って言えば、Webデザイナー、フロントエンドエンジニア向けの業務は常にニーズがあります。

フリーランスで仕事を見つけるには

独立前の同僚や知り合い、過去の取引先など、各自のネットワークやコミュニティなど、人脈を生かして仕事を獲得するケースが多いようです。発注側の心理としても、いきなりの初対面よりは「この人なら安心」と思える人に依頼したいと考えるのは自然な流れだと思います。

その他、自分で運営するWebサイトやSNSで受けた問い合わせから仕事につながったり、マッチングサービスやクラウドソーシングサービス、エージェントサービスなどを経由して仕事を見つけたりするケースもあるようです。

フリーランスに向いている人

フリーランスは営業も実務も金額交渉も自分でやらなければいけません。人とのコミュニケーションは不可避なので、コミュニケーション力は必要です。また、責任感を持って取り組める人、依頼内容を咀嚼してプラスの提案をしてくれる人期待以上のアウトプットを出してくれる人は、継続的に仕事を獲得できるでしょう。

フリーランスの年収は?

画像出典元:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2018」

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の「フリーランス白書2018」によると、すきまワーカーを除いたフルタイムフリーランスの年収(月の平均勤務時間が140時間以上の人)のボリュームゾーンは、300〜500万円という調査結果がありました。

Web業界で依頼されやすい業務、単価が高い業務は?

Web業界でもさまざまな職種のフリーランスが活躍しています。業務内容も単純なデータ入力から複雑なプログラミングまで、さまざまです。スマホアプリ開発やCMS構築など、より専門的な知識が必要な仕事は案件の単価が高い傾向にあります。

また「Webデザインができてコーディングもできる」、「JavaScriptなら誰にも負けない」など、「専門性が高い」「対応領域が広い」と強みになります。ライバルが少なくなるため、単価交渉や仕事獲得に有利になります。

専門性の高さをアピールするには、資格取得がてっとり早いです。フリーランスとして活動したい人は、自分の職種で生かせる資格取得を目指すことも考えてみてください。

まとめ

今回は、特定の組織に属さず仕事をするフリーランスについて解説しました。自由な働き方ができる一方で「わざわざ社外の人に依頼する」というハードルを越えるには、確かなスキルが必要です。

文中で触れた「フリーランス白書2018」は、これからフリーランスで働こうと思っている人にとって、役立つ情報も多いので見ておくことをおすすめします。

参考:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2018」

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